となりのトトロの草壁家の隣にある神社の巨木、天空の城ラピュタそのものを構成する巨木、スタジオジブリ作品で僕らが見てきた巨木と社の風景は、背景画を描いた男鹿和雄さんの故郷、秋田の風景だと言われている。里山の田舎の風景を、なんでもかんでもジブリに例えるのは安直だなあ、と思っていた昨今、しかし、ここほど集中して『ジブリ的風景』が見られる場所は無いと思う。しかも日帰りで。

東京から約50キロ、日帰りできるところにあることに気がついたのは、丁度、東北食べる通信をはじめて東京に戻ってきた3年半ほど前で、それからカメラを持って何度となく通っていたら、古くからの地元の農家である小宮さんにお声がけいただき、こんなものをつくりました。最初は、なにをつくっていいのやらさっぱりわからず手探りで、取材していく中で、ここは、良くも悪くも中世がそのまま温存されたまま、現代に至っているけれど、新しい風が吹き込まなければ、続いてもいかない瀬戸際なんだと理解した。

ここ半年ほど、のべ19往復、途中それこそ神が降りてきて「歩きなさい」と言われたような気がして、まる4日ほど徒歩で歩いて、小道一本一本を確認しての作業となった。掘れば掘るほど出てくるかみさまの形跡、最後には巨木を一本一本確認するに至る。巨木には必ずと言っていいほど、社か、道祖神か、石碑か、墓が伴っており、誰かの意志を伝えるかのように生えている。大きいもので約800年。『かみさま』という抽象的なものをタイトルに盛り込んだのは、なんの信仰があるというわけでもなく『八百万の神』のことだが、箱根と湘南という二大観光地の影に隠れて、ひっそりと残ってきたこの場所を、これからどうしていくのかを考える為の、フィールドを浮き彫りにするためのランドスケープ的な表現となった。こんな再現性の無い仕事は何年かに一度だなぁと、久々に背中を押されているような仕事だった。

神奈川県大井町(おおいまち=東京都品川区の大井町駅ではない。要注意)ここは、いわゆる地域起こしの文脈からいうと、初々しい。まだよちよち歩きの段階で、空き家も無く、移住者を求めるというような流れがあるわけでもない。(なんと空き家ゼロ)現時点では、住みたくても市街化調整区域なので簡単には家が建てられないというという問題も立ちはだかっている。

ステレオタイプなところから聞こえてくる『地域ブランディング』『移住促進』『地域起業』『リノベーション』etc…というようなのとはちょっと違って、東京日帰り圏における地域の在り方や、東京に住んでいる都市住民の一人として、日帰りで農体験のできる『ちょっとすぐそこの田舎』に立ち寄る理由が欲しいのだ。

印刷された1万5千部のうち約半分がまず全戸配布され、5月18日から半年間、小田急線新宿駅西口と南口の改札内でも配布されるので通りがかったら是非ご覧下さい。

2017年4月1日 発行
発行元:大井町役場 相和地域活性化委員会

発行支援:ランドブレイン株式会社
監修・コーディネート:小宮 真一郎
デザイン・写真・線画:玉利 康延
編集・文:小野 民
字:山本 安朗
印刷:株式会社イニュニック
文章協力:鈴木 勝、鈴木 裕也、香川 倫幸