Designing Obama – ムーヴメントをデザインする
speaker:Mr.Scott Thomas
date & place:2009.08.28
IID(世田谷ものづくり学校) 3階にて
written by @tamachangg / coordination @whynotnotice / photo @saikocamera

いやぁ、東京にたまたま居てよかった。今日は二つのことが解った。

ひとつは、新しいアートディレクターと、古いアートディレクターが居るということ。かなり率直に言うと、ウェブやインターネットのことが解らない、印刷の世界のみを相手とするアートディレクターがいるから、ウェブデザイナーとかいって仕事を無理矢理切り分けられるけれど、むしろそれは彼らがもはや仕事になんないってことであり、まだまだそういう人が多い日本では、アートディレクターという言葉のイメージが古めかしく聞こえるが、もはやそういう時期ではなくなってるってこと。

もうひとつは、スコット・トーマス氏28歳がとても歳が近いってことと、彼の設計とまるで同じことを僕らは2003年から2005年くらいにやっていたんだってこと。ムーヴメントを広げるために素材をフリーで提供すること。ソーシャルネットワークを生かすこと。WEBもPRINTも結局は一緒だってこと。素材の良さを生かすこと。話を聞いていてやってることはまったく同じなんだなぁ、と感慨深かったこと。その頃やっていた基本的なコミュニケーション設計は、他の分野でも応用して生きるはずのものだったんだということが、大きな大きな発見であったと思う。

しかし、彼が今回日本に探しに来た、シンプルさ、ミニマルさって、いったいなんだったんだろう?



今日は、オバマのキャンペーンで最終的にアウトプットされた形までのプロセスをお見せしていこうと思います。オバマの選挙も終わったことだし、エスケープするつもりで日本に二ヶ月来てました。政治のことから逃れてきたと思ったのに、日本に来たら、最初に目に飛び込んできたのが、これです。彼(民主党の鳩山氏)この男はとても険しい顔をしていて、悪者に見える。(笑)。


もし僕が日本人で日本に選挙権があったら、間違いなく幸福実現党に入れてhappiness(とポスターに英語で記述されているから)な日本になりたいと思うけど。(笑)。

2007年の9月からからオバマのデザインディレクターをやっています。当初2人でやっていました。あなたが見たことがあるほとんどすべてのデザインを決める仕事です。僕はオバマははじめて本当に信じられると思った政治家です。いままでにいなかったタイプの政治家だったので、デザインディレクターとして、やりきることができた。


まず最初に、my.boって呼んでいたSNS、マイバラクオバマドットコムをつくることから始まった。その次にMySpaceだとかTwitterだとか、ソーシャルネットワークに手を出した。彼らが自然とやってくれるように手がけた。次がビデオですね。オバマを撮影するだけでなく、オバマを取り巻くムーブメントを撮影するようにした。ファイナルカットをつかえる人に素材を無料でダウンロードできるようにしたり、アメリカ中を駆けめぐったムーブメントをみんなで同時に記録していった。オンラインアドなんで、ウェブ上の広告をあっちこっちに出していった。オンラインゲームでの広告も出していった。一日3通メールを送っていて、いま選挙でどういうことが起こってるのかをライブリポートしていった。僕はシカゴで仕事していましたが、アメリカってすっごい大きいから、みんなが何を考えているのかを掴むのが難しい。ほかの地域で何がおきているか、どんなことを考えているか伝えてくれるチームをつくりました。


分析チームの人たちは、自分たちがデザインするにあたって冷静に論理的にどういう状況で、どういうものが必要だとか言って、ツールをつくりました。デザインはたいしたことないんだけどね(笑)。政治のグラフィックスでよくありがちなミスを犯さないように、適正なグラフィックをつくっていった。ミーティングは一度もしなかった。オバマとのミーティングもいままでに一度もない。

気付いたのは、最も大切なのはなにを伝えなくちゃいけないのか、ってことを考えた。最も大切なことを、明確なメッセージをつくることで、誰もが活用できるようにしました。また、オバマを「彼」ではなく、「We(私たち)」と呼ぶことにしました。そのメッセージはHOPEでした。また、それをどうやってビジュアルで表現するか気を遣いました。


当初オバマは天才的だったと思いますが、はじめは信じられていませんでした。彼の言う言葉にパワーを持たせるためにタイポはこれで、カラーはこれでということ、ブランディングのようなことを三つ目にやりました。四つ目としては過去の事例だとか歴史から、この選挙戦が歴史的なものであるということを伝えるために、過去のイメージを多く使用しました。各メディアがどのような位置づけで関係性を持つのか、しっかりクリアにした上で戦略を立てました。最初はWEBとPRINTをわけようと思っていたけれど、最終的にはミックスな状況が生まれました。


まずはIA(Information Architects / 情報設計)をしました。ボックスの面積の大きいほど、プライオリティをおいていて、Presuade(説得する)、Raise(お金を集める)、Activate(活発化する)、Localize(ローカルの問題と捉えてもらう)、Represent(代表する)、Educate(教育する)、Introduce(紹介する)、Connect(繋げる)、です。その流れをつくるのです。情報構造をつくっていったら、だんだんウェブサイトのように見えてきた。


それらの情報設計を組んだ上で、ウェブサイトをリデザインしました。まず、青が重要です。空の青です。少し暗い。ホワイトハウスの大理石のグレーに近い青を使うことにしました。ウェブサイトは27種類のデザインを考えて、最終的なデシジョンをしたのは、オバマではなく我々のチームが決め、その最終的な責任者でした。

人の目が触れる一番大きな場所に情報の優先度、新鮮度の高いものをレイアウトしました。新聞をたたむっていうことと一緒で、たたんで見えなくなるところは情報の優先度を下げていった。結局よくありがちなのが、必要な情報を全部織り込みたいからカオスになるっていうことがあるんだけど、今回はある程度ウェブに慣れている人がターゲットっていうことになっていたから、それに合わせて情報の優先度を決めていきました。

Doin’ it Live「ライブでいけ!」

Test「でもやっぱりテストは大事」

Evolve「進化していくってことも大事」

3月に予備選に勝ってから、どんどん社会的な情報を出すっていう方にシフトしていった。徐々にメッセージを「実際的な変化」のようなものにシフトさせていきました。また、3月まではメールアドレス登録の窓が一番上にありましたがそれは取り下げて、SNS的な機能、MyPageに飛べるようにしました。

また、ライブ機能を追加しました。オバマだとかバイデンがスピーチしているとしたら、それを中継する機能です。さきほどの活性化のために、MyPageのデザインも変更しました。ニュースはかいつまんだ情報しか出してくれないので。マイバラクオバマドットコム。Activationのためにこのサイトがあるんだけど。重要なのは歴史的に初めてTwitterだとかYouTubeをつかったりっていうソーシャルメディアを使った政治キャンペーンを行うことができた。たとえばTwitterでオバマがつぶやいた瞬間にそれが伝わっていく。これに嘘をつくことができないし。支持者との交流が始まって、これが、アメリカの政治のあり方を根本から変えてしまったと思う。

Participation
いままでは、政治に興味ある人たちしか政治に参加してこなかったけれど、政治的に関心がない人を巻き込む、ということにフォーカスした。本来(商業広告的なコミュニケーション)であればブランディングしていく上で、すべての制作物のトータルイメージを維持することが大事なのだが、オバマのキャンペーンに関するデザインのいろんな要素をウェブ上でダウンロードできるようにして、彼らが好きなようにつかえるようにした。たとえばマイケル・ジョーダンの格好をしたオバマのチープなTシャツが売られていたりしたんですね。マイバラクオバマドットコムで、さまざまな素材をダウンロードできるようにしたことで、多くの人が自分のオバマツールをつくった。TEES BY THE PEOPLE FOR THE PEOPLEという、デザインコンテストなどもした。Tシャツをつくったり、ポスターを印刷したり、シールをつくったり。それらを友達に配ったりすることが、活発化につながる。

アメリカでは、投票権は登録制なので、それをとても簡単に、親しみやすくするするツールを開発した「SimpleVote」。今まではとても複雑でしたが、これは本当にシンプルです」(ちなみに日本の場合は登録すら必要ないのでもっとシンプル)結局、一つの質問で一つの答えを出していくってうシンプルなものにしました。軍だとかによってレギュレーションが違うところがあるので、あまり複雑なものにはしなかった。

これらの行程をゼロからずうっとやっていくことで、凄い良かったことは、いろんな人たちをアクティベートすることができた。次の日はオバマとそのコミュニティのためにバイオリンを弾いたり、アクティベートする人たちがどんどん出てきた。YES WE DID。私たちが有能だったのではなく、多くの人が参加したことが、オバマの勝利につながりました。一人ひとりが変化を起こせると証明されました。


大統領選挙はオバマ勝利で終わり、終わったあとは一ヶ月くらい冬眠する熊のように眠った。だけどすぐに自分たちの前にタスクがあることに気が付いた。ホワイトハウスのサイトをリデザインすることだった。自分はアーキテクト、建築学を学んでいたから、ウェブサイトの設計もこの建物の構造を同じようなものかなと思った。自分がすごい大切にしたいところが、フィジカルにコミュニケーションするってことなんだけど、ウェブ上で冷たい感じではなくきちんとコミュニケーションできるかどうかってことであると。結局、ホワイトハウスのサイトの設計は、ホワイトハウスの建築的構造を参考にしました。情報設計とは、ウェブで完結することはなく、リアルな人と人のつながりをデザインすることなのですから。

Thank You.
SimpleScott.com
@simplescott

兼松くん
そもそもなんで今日の会になったかというと、たまたまスコットがTwitterでTokyoで検索して、東京に行くんだけど飲まない?って話になって、RTされて。今日の会になった。笑。世界は思っているほど大きくはないね。


Q.
新しいアートディレクションをやったってことは、当然古いアートディレクターもいたわけですよね。その人たちとどういうコミュニケーションをしたのか。どう引き継いだのかを聞きたい。

A.
どういう風にチームに入ったのか?2007年の9月に連絡がきた。ポートフォリオを見て連絡が来た、そのときはポートフォリオをウェブ上に置いていたことすら忘れていた。最初はホワイトハウスで働かないかってことを言われたんだけれど、その代わりに他の人を紹介したんだけれど。そうやってウェブ上でコンタクトが来て、母親と長い議論をしたと。歴史的に世界を変える選挙になるはずだから、といってやることになった。

Q.兼松
すごくプレッシャーのかかる仕事だと思うんですよね。ドネーションボタン一つのかたちで、効果がすごい変わると思うんですよね。

A.
これはなかなか自分たちが経験できないことだったのでよかった。普通自分たちが作ったものが、ずうっと使われることはなくって、すぐに次、すぐに次っていうふうにリニューアルされることに慣れちゃっているから、それが、今回は自分たちの設計したものが、建築物のようにずうっと残ることがよかった。あまりに忙しすぎてビビる暇は無かった(笑)

Q.マイケル
大統領選が終わってからも続けないかと誘われなかったのか?ということと、マケイン陣営からも誘われなかったのか?デザインをする上で一番気をつけていることはどんなことか?あと、今世界で最もキャンペーンしてみたい商品や人はいますか?

A.
ホワイトハウスに入れってことだったけれど、それを辞めてここに来ました。僕たちはほとんどマケインが何をやっていたか見てなかったよ(笑)。彼らの方が僕らのデザインをチェックしていたね。そしてそれはとても気分のいいことだった。

自分の名前をSimpeScottって言ってるくらいだから、どんなことでもシンプルに答えることを心がけている。ぱっと思い浮かばないけれど、今の世の中は、デザイン過剰です。もっと削減すべきです。だからブランディングしたい個人も、キャンペーンも今のところありません。もともと自分が選択するものの水準を変えれば、いまの過剰なパッケージングはいらないんじゃないか。坂茂さんから凄いインスピレーションを受けていてリスペクトしていて、トイレットペーパーの芯をまるから四角にすることで効率化できるじゃないか、っていうアイデアを見たときにぶっ飛んだ。最近はGraigslistのデザインリニューアルをすることになりました。個人的に気をつけているのは、常にシンプルであろうとすること。

Q.
フォントについて教えてください。


A.
最初はGill Sansっていうヨーロッパのフォントを使っていたけれど、Gothamというニューヨークのタイポグラファーがデザインしたものに変えた。Helveticaのように読みやすく、新しい感じとしっかりした感じが両立している。(Gotham … Movable Typeや米大統領オバマ氏(Barack Obama)のPR用書体

(ちなみに、Gothamは誰が決めたの?と先日聞いたら、「俺が決めたよ」と言っていました。すげ~~ by 鈴木菜央)

Q.
どういう切り口でデザインの結果を分析していったのか?

A.
たとえばgoogleで段落が二つになっているほうがいいのか、一つの方がいいのか。基本的にデザイナーは自分がつくったものが一番いいものだって思うんだけれど、それを冷静に分析していった。

Q.
今書いている本「DESIGNING OBAMA」について教えて。実像のオバマなのか、オバマの幻影をつくったのか。デザイナーとしてのオバマなのか、オバマそのものなのか。

A.
基本的にオバマというその人自身がブランドをもっていて、私たちがやったことは彼からいかに言葉を聞いて、素材そのものをいかに生かすか、ということに注力しました。オバマ自身はつねに全米を旅して回っていた。だから批評なり改善点なりという質問に対しては、無い。ということです。本の内容というのは今日お話させていただいたプレゼンテーションの内容に似ています。投票権がないのにスペインの浜辺に40メートルくらいのオバマの顔を砂で描いちゃったり、そういう写真をチョイスしている。

Q.
どれくらいのチームで、どれくらいのスピード感で作っていったのか?

A.
それは非公開情報です。全体の情報設計はニューメディアディレクターのジョーが決めた。YouTubeチームはたくさんの人が撮影していた。10人は常に編集とストリーミングを担当していた。Twitter、SMS(ケータイメール)なども担当者がいました。

Q.
オバマのキャンペーンって非常に大きなキャンペーンですが、ふつうの商業的なキャンペーンとの差はありますか?

A.
キャンペーンを打つマーケットが、どういうふうにものごとを経験するかを考えてデザインしていく。政治キャンペーンのデザインと一般のデザインの最大の違いは、デザインを状況に応じて臨機応変に変化させていく必要があることです。商業的なものは最初に練ったものを続けていくけれど、ポリティカルなものは戦場でデザインするようなもの。戦況は常に刻々と変わります。

(スコットが一度もオバマと打ち合わせをしなかったのは、オバマが全米をキャンペーンで回っていたこと、チームがきわめて効率的にスピード感を持って仕事をする体制が整っていたこと、キャンペーンに関する決定権をもっていたことなどによるようだ。 by 鈴木菜央)

Q.
ロゴをばらまいて、それがいいように使われていったんだと思いますけれど、それがいいように使われるポイントがあったら教えてください。

A.
まず最初に、今回のキャンペーンではアメリカっていうものすごい大きな国が相手だったので、ひとつひとつの州を管理していては、キャンペーングッズをデザインすることは不可能だった。ディズニーなどはデザインを使われないように管理する思想があって、いい方向で使われるためのポイントなのだけど、今回はデザインをシェアすることによってそれを可能にした。彼らが自分でデザインしてくれて、とても感謝しています。

もう一つは、私たちがオフィシャルでオバマのデザインを正当な、オフィシャルな強いイメージというものをこちらで作ったので、シェアしたとして、、、たとえばイスラム教の一派でオバマを支持するということがあったんですけども、オフィシャルで発信している情報がしっかりしていたので、混同されることがないということで、シェアすることにした。始めにしっかりオフィシャルを確立していって、誰でも使えるようにしていった。

Q.
今日はデザイニングオバマの話だったので、ちょっと堅く見えるけれど、今日ここに来る前に個人のデザインのお仕事を見ましたが、日常心がけていることは?

A.
デザインするものには目的がある。デザイナーは装飾家ではなく、問題解決の手法である。シンプルであること、ミニマルであること。数学に例えてなんですけど、ひとつひとつの数式には答えがあるように、それに合った解決方法があるはずだ。今回日本に来たのは、シンプルさというものを追求するためにここに来ました。日本にはそのシンプルさ、ミニマルさがあります。それを学びに来ました。

おわり



DESIGNING OBAMA ~ ムーヴメントをデザインする | グリーンズ greenz.jp
http://greenz.jp/2009/08/27/simplescott/