海外で一人歩きしたことはこれまでほぼ無い。無いのであらゆることを想定しながら、あとから考えると無駄な気苦労と心配を重ねながら突き進む。ほんと子供時代からのやり直しを迫られるもので、電車のチケットになにかあって受付で英語のやりとりをしなければならない状況などを想定すると頭がいたいのだが、せっかくここまで来たのだから、マンチェスター空港で今回のツアー一行と一端別行動をして、英国東北部の古都ヨークに向かうことにした。あらかじめ予約していた電車のチケットを無事受け取り、Coach: C Seats: 15 へ。何号車、っていうのがコーチってやつらしい。車両はJR九州のようであるが水戸岡氏ほどの遊び心もないような。その差異から水戸岡デザインのオリジナリティが浮かび上がって見えてくる。

古都ヨーク。英国がブリタニア属州と呼ばれていた西暦71年、ローマ人が要塞を築き、その後4世紀にゲルマン民族の大移動の結果、アングロ・サクソン人によって征服され、その後ヴァイキングによって征服され、という歴史を繰り返してきた英国の古都。日本でいえば京都と鎌倉の間くらいのサイズのような、古い物がきちんと残っていながらもコンパクトな観光都市という感じ。主要なところはほぼすべて徒歩で回ることができる。

ここには terumin が一年前から留学している。海外に知り合いが住んでいるということほど心強いことはないなあ、と思いながら英国にしてはかなり強い雨が降る中、ヨーク駅に到着。まずは最初にスーパーマーケットチェーン Marks & Spencer(M&S) へ。このスーパーは飲み物を除くほとんどの食品がプライベートブランドになっていて、すべてがパッケージデザインされていて、そしてそこそこの安定感のあるクオリティの食べ物がそろっている。ここに来るまでに寄ったいくつかのスーパーでは、どれもこれも不味く英国流通の悲惨さばかりを目にしてきたので、ここに住むことへのリアリティが大きく向上した。

ここでの発見は、いわゆるレンジでチンでつくるような食べ物『ready-made meals』の種類が多いことだ。あらゆる食べ物がready-made mealsでそろっており、日本人よりももっともっと料理をしない状況が進行している。近い将来日本でもセブンアンドアイあたりが真っ先にこの状況を作り出しそうな気がする。そのとき、どう向き合うべきだろうか?米はあまりおいしくないのでロンドンまで買いに行くらしい。野菜は例によってフランス産かスペイン産かイタリア産が多い。もちろん街中にある青空Marketに行けば、地元産の野菜も手に入るけれど、その流通量は微々たるものだろう。

ready-made mealsの世界を垣間見れるサイト
http://glutenfreecuppatea.co.uk/2016/04/23/lets-check-out-the-marks-and-spencer-gluten-free-range/

留学において、身の回りのものをそろえるのもいろいろと苦労があるらしい。ワーキングデスクを探して近隣都市のリーズまで行っても気に入ったものが見つからず、頭を抱えていたところ、ヨークの街中に、布団の西川がやっている家具店、その名も『FUTON』を見つけ、デスクを買ったという。この店の家具にはなにかほっとする日本的な機能性を持ったものとヨーロピアンデザインとのバランスがある。僕は20年前、プロダクトデザインの仕事をしていた頃、さかんに日本の家具や雑貨のデザインは酷い、ヨーロッパのモダンデザインを参考にするべしと上司に言われ、ザ・コンランショップなどの輸入雑貨店にさんざんつれていかれ、そしてそれらを買いそろえていた時期があった。あの頃、確かにヨーロッパのモダンデザインは輝かしかったが、今回、久々に英国の雑貨店を眺めてみると、見た目はシンプルでよいものの、機能的なバランス感のまるでないものが多いように見える。ヨーロッパのモダンデザインとは、つまりものすごくシンプルで洗練されているのだけど、細かいところはざっくり、大雑把なんだなと理解した。ル・コルビュジエよろしくただガラスとステンレスにすれば良いというものでは、もはやまるでない。

この国に来てから、これがあったらなぁ、と思った日本のものを列挙してみる。

・ホテルのスリッパ(そもそも室内でも靴を履く国だから仕方ないが)
・自動販売機の存在
・ペットボトルの冷たいお茶をいつでもどこでも買えること
・カップラーメンの味のクオリティの安定感
・野菜の種類の多様さ(大根とか白菜が無い)
・魚の種類の多様さ(イカとか海老とかタコは悪魔の食べものだと思われているらしい)
・肉がスライスされて売っていること(こっちでは固まりでしか使わない)
・ユニットバスの機能性(シャワーとバスタブが別々だったりとかする)
・ウォッシュレット、ウォームレット(ロンドンの四つ星ホテルですら無かった)
・ホテルのアメニティ(歯ブラシとひげ剃り。タオルとシャンプー石鹸類はある)
・ビニール傘(そもそも滅多に傘ささない人達)
・コインロッカー(基本全部荷物持って移動しなきゃならない・・・)
・SUICA等非接触カード(ロンドンの地下鉄は最低区間で4.5£=約600円から!!)
・漢字(英語は読むのに時間がかかる・・・。これは日本というか中国か)

ここまでの数日間で、いわゆるよくある留学生の留学先での自国文化への理解を深めるという状況になっている。日本て良い国だなぁ。



ヨーク駅構内。マンチェスターから1時間半、ロンドンまで2時間の距離である。左に見えているのがマンチェスターから乗ってきた電車


M&Sのプライベートブランドジュース。安定感のある味


午後22時半でもまだ夕焼けの残照。夕方の時間がとてもとても長く感じる


ヨーロッパの大木はどれもこれも動き出しそうな雰囲気がある


レンガの壁から出て来ている植物


割と良く出来ているガーデニング


Edible York。今回の旅の目的であるEdible Gardenがこの街でも始まっている


古都ヨークは全体的にゴシック式の建物が多く残っている


街中にある青空Market。やはり食べものを買う場所はこうでなくては


Market脇の魚屋さん


Market脇の肉屋さん。ちなみにこの国に薄切りは無い。長期で住む人はスライサーを買ったりするらしい


ヨーク城の天守閣のようにそびえるClifford’s Tower。この城のいま残っている部分は、西暦1244年、スコットランド軍がイングランドに侵攻する懸念が出てきた為に建てられた


Clifford’s Towerの城壁から見えるヨークの街


カップヌードルを探し求めて中華食材店へ行くterumin。普通のスーパーで売っている英国製のカップラーメンはものすごく不味いので食べられない。この国で食べるNissinのカップヌードルは、山の頂上で食べる食べもののように美味く感じる


布団の西川がやっている家具店『FUTON』畳のベッドまで売っている


ヨークの街を取り囲んでいる城壁から見える大聖堂。大聖堂はドイツのケルンに次ぐヨーロッパ第二の大きさ


外国で出会う動物はどいつもこいつも外国人のような顔をしているのは気のせいだろうか?


ホームレスのおじさんがくれるお菓子をねだりに膝まで上がってくるリス


リスはヨークでもロンドンでも、普通に都市の公園に住んでいて、とても人慣れしていて逃げない


この花、英国に来てからずっとあちこちで見るんだけれど、なんという名前なんだろう?