東北食べる通信 2013年7月号 完熟牡蠣(宮城県石巻市)

2012年末、食べ物の仕事がしたいと思っていた。あっちこっちでそんなことを言っていたら、友人の今村久美によって東北に呼ばれることに。具体的には、宮城県の石巻、南三陸、岩手県の花巻、遠野、久慈あたりに毎月一度、3〜4日は取材して回る生活が始まっていた。4月から具体的に動き出し、まる3ヶ月とちょっとをかけて、D4タブロイド判サイズの情報誌「東北食べる通信」の第一号が完成。第一号は『完熟牡蠣』が5個セットになって、1,980円。定期購読のみの受付になっている。表紙に「史上初の食べる情報誌」などと書いてあるが、要するにこれは食べるディアゴスティーニであり、食べるレゴブロックだ。






東北食べる通信 2013年8月号 短角牛(岩手県久慈市)

2013年8月2日。岩手県久慈市山形村基幹牧場。最高気温22度。いまだ梅雨の最中。霧雨で牧場の風景が幻想的ではある。あるのだが。。。涼しかったのは盛岡までで、半袖ではとにかく寒い。久々に暖房が身に染みる。8月10日。これでもか!というくらい東京都内で短角牛が食べれる店を行脚した。その中でも一番美味かったのは六本木のヌッフデュパプ。生後26ヶ月の短角牛のランプ肉のステーキ。400グラム。






東北食べる通信 2013年9月号 鈍子(福島県相馬市)






東北食べる通信 2013年10月号 米(岩手県遠野市、秋田県潟上市)

2013年10月号の地域の一つ、岩手の遠野には3回か4回通った。テーマが米だったこともあって、時間の変化をきちんと追いかけたかったから。通った回数が、文脈を伝えるための写真の枚数に繋がり、結果的にエディトリアルの可能性が広がって、物語に深みを与える。遠野はよかったなぁ。柳田国男が遠野物語とか書きたくなったのはよくわかる気がする。地形が、風が、神がそこにいるような感じをさせる場所。それをなんとか時間の変化と一緒に表せたらなぁ。稲穂が色づいていくプロセスは、まるで神がそこに魔法をかけたようだ。

今月号のもう一つの地域は秋田県の潟上市である。平野部で育てている作物はひらすらの米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米米。地平線までぜんぶ米。穀物はほとんどが米らしい。故にこの季節はどこまで行っても一面の真っ黄色。だから「秋田」なのか、と思いつつ、田んぼを見るのが「飽きた」っていうところからも来ているらしい(潟上市の米農家・菊地さん談)

新青森への新幹線の開通により、秋田県は東京から最も遠い東北地方になった。東京から新幹線で直通でも4時間。どうやらここは飛行機で来るところだったらしい。中央から遠かったためにいろんなものが現在でも残っているんじゃないかと思う。そして岩手県内陸部より多少暖かい。






東北食べる通信 2013年11月号 会津伝統野菜(福島県会津若松市、喜多方市)






東北食べる通信 2013年12月号 新巻鮭(岩手県大槌町)

2013年12月初旬。朝6時頃の夜明けの大槌湾は寒い。とにかく寒い。深夜2時半頃に出航して、6時間ずっと甲板で撮影。ため息が出るような美しさの朝焼けとともに、その寒さはやってきた。あのとき気温はマイナス何度だったんだろうか・・・。今回船酔いはせず、ただただ寒さと眠気との戦い。今回の立ったまま寒いの6時間と、2013年9月号の相馬からのトロール船はの寝る場所があるけど船酔い8時間ではどっちがいい取材だったかな。新巻鮭はお茶漬けがオススメ。濃いめの日本茶で。






東北食べる通信 2014年1月号 寒中野菜(福島県いわき市)

福島県のいわき市は映画、フラガールの舞台。(あまり本誌とは関係ない)いわきには10月から計3回ほど行きました。毎月毎月戦場である。今月こそ、ああ、もうダメだ、と何度思ったことか。でもなんとかなってる。いわき、東北なのに雪が降ってなくて、温暖で、その結果原発周辺地域からの移住者が最も多く、人口が純増なんだそう。

取材の日、会津若松市からいわき市へ参りました。会津磐梯山の麓は雪雪雪雪雪。磐越西線の窓より。雪を見るととても懐かしい感じがする。子供の頃に散々豪雪地帯に連れて行かれたからだろうか。この季節、一日で会津若松→郡山→いわきと福島県を横断してみて、雪があるのは郡山の手前までなのだ。郡山から先、阿武隈高原にも雪はないし、いわきは雪が降ることすらない。気候がまったく違う。会津は新潟(越後)の文化圏であり、いわきは茨城(常磐)の文化圏なんだなあ。福島県ていうのはどういう意図でこんなふうに線引きされたんだろう?文化的な繋がりを寸断する必要でもあったんだろうか。






東北食べる通信 2014年2月号 一番海苔(宮城県東松島市)

東北食べる通信は、毎号毎号かなり無茶なスケジュールで製作されており、毎号なにか奇跡が起こってスレスレのところで成立していたりする。2014年1月29日。早朝から予定されていた宮城県東松島市の漁師、相澤太さんの海苔の船上取材が、冬場の悪天候のため出航できなくなり、我々は頭を抱えていた。そんなところに現れたのが太田将司さん。太田さんは震災後、東京から東松島市に移住し、漁師の右腕として活躍していた。そんな太田さんの写真が無ければ、東北食べる通信2月号は成立しなかっただろう。






東北食べる通信 2014年3月号 生若布(宮城県南三陸町)

東北食べる通信3月号。宮城県南三陸町のわかめと牡蠣を育てている漁師の千葉拓さんの取材は、もうかれこれ一年近く前からやってきて、船にも三回くらい乗って、一年越しのアウトプットである。






東北食べる通信 2014年4月号 活帆立(岩手県大船渡市)

大船渡にて早朝4時半頃。最初のホタテ漁から戻ってきて、浜のおかあちゃんの芸術的なホタテさばきにしばし見惚れた。今月はやたら印刷の発色が綺麗でびっくりなんだけれど、印刷のイニュニックさんなんか仕込んでくれたんだろうか?繁忙期を除きイニュニックさんはアドバイスをくれたり、色味をなおしてくれたり非常に頼もしい印刷屋さんであります。デザイナー諸氏は社長の山住さんに是非アポとって伺うべし。






東北食べる通信 2014年5月号 天然蕨(岩手県西和賀町)

わらびという超超超地味な素材と向き合う作業をすることこの一週間。今回は創刊以来初めていろいろとやりたいことをわがまま言って、つくりたいものをつくらせてもらった。

しかも現地取材が5月9日で、そこから実質一週間。編集会議の話し合いをひっくり返した部分も多々ある。というのも、山菜というのはそのときになってみないとどう料理(デザイン)していいのかわからないなあと思っていた。ならば「我々は土壇場に強いじゃないか」という編集長の有り難い一言で、土壇場で撮影、土壇場で製作という濃い一週間だった。Adobe Illustratorに手を付けたのはかれこれまだ4日前のことだ。そして西和賀にいたあの日からまだ一週間しか経っていない、けれどあっちでは山の草木が満ちあふれんばかりの成長を遂げていることだろう。季節適合性の高いネタだとどうしても入れ込んでしまう。

その満ちあふれんばかりの春の命の芽吹き、東北のスプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)を題材に一号通しで作った。東北の山奥の春の芽吹きがこれほどまでとは想像できなかった。そんな題材だったということも5月9日にあっちにいたときに気がついたので、あまりコンセンサスがとれていないのだが。






東北食べる通信 2014年6月号 貽貝(岩手県山田町)

岩手県山田町の黒いダイヤを獲る海賊達。午前中にめいっぱい仕事したから、昼からBBQ。岩手・山田湾の海賊達に見せつけられた彼らのお宝達は美味かった。目の前にあるものを獲り、漁協に必要以上に縛られることもなく、でもちゃんと経済的な利益を得ていて、まったく卑屈な感じがなく、自由闊達な感じ。亡きスティーブ・ジョブズが「海軍に入るくらいなら海賊になった方がいい」っていうようなことを言っていたのを思い出した。

今月は編集長がやりたい放題やってるので、誌面だいぶぶっ飛んでいる。アメコミ風になってたり、ワンピ○ス風になっていたり、そうとう遊んだ。レシピのパエリアに使っているサフラン繋がりで福島県喜多方市の農家さんもダブル登場。などなど今月も新しい試み満載。

これで東北食べる通信を創刊して12号目。丸一年経った。まさか一年ずっと月刊でやり続けるとは思っていなかった。月に一回燃え尽きる日がもうしばらくは続きそう。





2年目に続く