東北食べる通信 2015年7月号 大蒜(青森県田子町)

久しぶりに約1年ぶりに緑色の表紙であります。じりじりと照りつけてくる太陽と、汗とほこりにまみれながらの取材。いろんな意味で、土とはなにかを考えさせられる号だった。青森県田子町というところは現在でも活火山である十和田湖周辺の地域にあたり、火山性の土によって表面が覆われている為、土煙が上がると、あたり一面が煙だらけになってしまう。農作業は常に、粒子の粗い土との格闘になる。その土の性質に最も適した農作物がにんにくだということで、この地域では半世紀前に、にんにく栽培が始まった。

気温も上がり、徐々に体力も落ちてきて、夏バテの始まる季節。丁度そんな時期に収穫して出荷が始まるタイミングってのはよくできてるなあと思う。今回、メインのレシピはそんな時期に生のままのにんにくを食べれるレシピを掲載。その他にんにくレシピも多数、増量の黒にんにくも、そのまま食べるだけでなく、調理できるレシピをつくりました。においなんか気にせず1日3食くらい、にんにく尽くしにすると体力も戻ってきて、なんだか体内が浄化された気分になった気がする。(くれぐれも胸焼けにはお気を付けください)






東北食べる通信 2015年8月号 葡萄(秋田県横手市)

はじめての果物であります。農産物色々やってきたけれど、今回一番印象的だったのは、ぶどうはなんて繊細な農作物だろうと。農作物というよりは工芸品のような世界。そしてやはり一回の取材ではとてもまとめきれない春夏秋冬のぶどう棚の変化。6月にぶどうは花が咲くのだけれど、これを自分で撮れなかったのは残念。しかし今回の農家さんの鈴木靖之さんは、ミラーレスカメラをご自分でもお持ちで、写真を撮ることができるという点では、これまでの漁師さん農家さんからまた一段リアルな風景をお伝えできる農家さんでありました。おかげで、ぶどう棚の季節変化もバッチリお届けいたします。

今回、表紙のぶどうをどの写真にするのかで最後の最後まで悩んだ。表紙は毎回生ものであればあるほど現地で撮影してくるのだけれど、生産されているぶどうの品種は読者にお届けするスチューベン・ナイアガラ・キャンベルの3品種のほかに、藤稔・ピオーネ・シナノスマイル・黄玉・ブラックビート・シャインマスカットと多品種に及んでおり、撮った写真の枚数も膨大。そして見分けもなかなかつかない。結局、表紙は実際にお届けする品種の中から、背景の色とのバランスで一番良かったキャンベルにし、残りは捨てるのももったいないので、ぶどう図鑑として、編集大詰めの最中土壇場でひと企画つくってつっこみました。毎回、そういう土壇場で新しいなにかが生まれる。






東北食べる通信 2015年9月号 海鞘(宮城県石巻市)

創刊以来最多登場3度目の石巻市。2度目の牡鹿半島。今回は出港30分で船酔いによりノックアウト。ホヤの養殖棚は浮力が高いために酔いやすいそうな。編集長以下乗り合わせたスタッフみんな惨敗の中、船上カメラマンを自称する山下雄登くんの三半規管は超人的に元気で今回も彼の撮った写真によりみなさんに現場の雰囲気をお伝えできるという次第であります。

しかし、気になるのは昨日のチリ地震による津波は大丈夫だったんだろうか?大型連休前によるギリギリの印刷手配や、そのための15日キッカリの入稿。配送の方もホヤ自体の旬の終わりということもあってクイックにお届けせねばならない、などなどスケジュールが非常にタイトになっており、それらに加えてチリからの津波という、今号は水面下でさまざまなドラマがあります。





東北食べる通信 2015年10月号 ちぢみ小松菜とマッシュルーム(岩手県八幡平市)

10月号というのは毎年情報量が多く、最低2生産者、去年は3生産者も一号の中に登場した。通常他の月だと0.8〜1.2くらいの情報を1にまとめるものを、10月号は2を1にまとめるような作業が発生するので、秋の収穫の時期は農家でなくても大変である。写真も二泊三日の取材での計2,000枚近くの中から選び、表紙や特集で大使いしている写真が撮影しなおしになったりとてんやわんやだ。そのぶん、かなり立体的に岩手県八幡平市を誌面上で表現できたような気がする。

今回、創刊号から編集を裏で支えてきた黒田知範が、レシピのうち1ページを小松菜の中華料理を紹介する形で登場。彼の「小松菜炒飯」と「小松菜とマッシュルームの五目麺」の撮影とレシピ執筆がやたらと拘っていて、製作が大変だったのは言うまでもない。今月はてんこ盛り!






東北食べる通信 2015年11月号 最明寺栗(秋田県仙北市)

最近、いわゆる地域活性化とか地方創生とかいう話は、どこもかしこも外からいかに人を連れてきて、外から血を入れて、その場所を元気にしていくか、という話ばかりである。それで良い所もあるが、それ以外の方法もあるというのが11月号特集の齋藤瑠璃子さんのお話。

僕らは無意識に「外」と「内」を使い分けている。使い分けすぎていて最近僕は疲れている。外から来た人、帰って来た人、土の人、風の人、都市にいる人、田舎にいる人。東京と地方、生産者と消費者。そういう区分けになんだか非常に疲れている。おりしも地球の反対側では大変なことになっているけれど、あれも結局、近代化の時間の流れの中で「外」と「内」を分けていったことの、ひずみの果てのような気がしてならない。その他にもいろいろ事情は複雑に絡み合っているんだろうけれど、目の前で起きていることと、地球の裏側で起きていることの本質は、案外似たようなものなのかもしれない。結局は両者の間でお話し合いするしかない。なので今日も僕はそのためのお膳立てとなる情報を編集しているのだと思う。






東北食べる通信 2015年12月号 黒鮪(青森県深浦町)

12月恒例の海のご馳走シリーズ。他の魚種に比べると圧倒的な大きさのクロマグロ。そのスケール感をどうお伝えしようか悶々と悩んだ号でした。今年は赤い表紙が多かった。3月槍烏賊、4月豚、5月紅海老、9月海鞘と、もう無いだろうと思っていたら最後にもう一つ待っていた。

今回で通巻30号を迎えました。いつまで続けるんだろう、と毎回思いつつ、笑っていいとも(放送32年で終了)や、渡辺篤史の建もの探訪(放送26年で現在も継続)に比べたらまだたったの2年半であります。2年半やってなんとなく東北の食というか、東北の森羅万象、東北の八百万の神というのは、東北にしかいないことがわかってきたような。山や川や海、地形、気象、海流、植物があって、つくる人がいて、やっと食べものに辿り着く。神を表現する方法をそのまま写し取っても、他の地域の神さまは、またそれぞれ違うかたちをしているんだと思う。おそらく、他の地域の神をあぶり出すための方法論が独自にあるはず。広くあちこちにというのは僕個人的にはあまり好きな考え方ではないので、これからも東北のみを深掘りしていきたい。






東北食べる通信 2016年1月号 米崎牡蠣(岩手県陸前高田市)

これまで東北食べる通信では、同じ品種を二回やることはなく、初めての二回目の牡蠣だ。漁師の佐々木さんが生の牡蠣が苦手ということなので、表紙は蒸し牡蠣で。牡蠣の色を一色決めるのがとても困難なので、題字一文字ずつ違う色になっている。増量特集の「椿油と山葡萄ドレッシング」とセットで蒸し牡蠣にしてお召し上がり下さい。今回はレシピも加熱押しであります。

イラストページもこれまで5人のイラストレーターさんにお願いしてきたけれど、6人目の新しいイラストレーターさんとして、杉山 巧さんにお願いした。(http://www.inori-books.net)イラストレーター年鑑を見ててたまたまいいなと思ったイラストレーターさんだったが、偶然ソトコトに掲載された東北食べる通信の記事のページの背景イラストを描いていたということで、相変わらず編集長は引きが強い。






東北食べる通信 2016年2月号 長芋(青森県五戸町)






東北食べる通信 2016年3月号 山葵(岩手県遠野市)

表紙は冷たい水に浮かんでいる艶やかなわさび。わさびの旬は特に無いが、花が咲いているのは丁度今頃らしい。このわさびが育つ水は早池峰山に降った雪が何年も経って湧きだしている湧き水なのだが、今回増量特集となっている花巻の佐々長醸造さんの醤油も、やはり早池峰山の湧き水をつかって作られている。

そして、その水が遠野市と花巻市の境界付近の猿ヶ石川で合流し、遠野から流れてくる2013年10月号の伊勢崎さんの田んぼで米を育てたであろう水と合流し、東北開墾の事務所のある花巻で北上川と合流して、北上で 2014年5月号の西和賀のわらびを育てたであろう和賀川の水が合流する。そして、ずーーーっと南下し、宮城県は石巻の河口に注ぎ出すまさにその場所が、2014年9月号の 中里将太 さんの穴子の漁場であり、そのすぐ北には2014年3月号の 千葉 拓 さんの若布養殖場が、そのすぐ南には2016年1月号の 佐々木学 さんの米崎牡蠣と、2013年7月号の 阿部貴俊 さんの牡蠣の養殖場がある牡鹿半島なのである。石巻直前で旧北上川に分かれているので、2014年2月号の東松島の 相澤太 さんの海苔も、逆に北上川を遡って、2015年10月号の八幡平の農家 田村真理子 さんも、この因果関係の中にあるかもしれない。

今回のわさびの生産者さんである 福地嘉之 さんの住む集落、その名も「湧水」集落から流れていった水が、ひょっとしたら下流の下流の穴子にはなにかしらが入っているであろうか、牡蠣の大きさにもなにかしら影響しているかもしれない。なんてことを想像するような、水の流れが全ページを通しての今号のテーマである。33号目。東北全域という面的なアプローチの結果見えてくるものがあるのを実感する。

・・・と、ここまで書いてみて、その全貌が見える流域地図をつくって入れるべきだった。と、今頃になって気付く。






東北食べる通信 2016年4月号 アスパラガス(福島県喜多方市)

季節的にまだアスパラガスが生えてなく、ほとんど写真撮影できず、自分で撮ったのは表紙のみなので、表紙に全力投球。二度目の喜多方。アスパラガス号でありつつ、喜多方ラーメン号でもある。メインのレシピは薩摩出身の 黒田知範 がつくる喜多方ラーメン+アスパラガス。彼も今回取材に同行し、滞在中4店の喜多方ラーメンを食べながらイメージを膨らませたという。いままでのレシピで最も美味かったんじゃないだろうかというこの喜多方風の幅広麺は、なんとスーパーで売っている普通のラーメンから自分でつくれるようになっている。製麺所に取材ができなかった結果、自分でつくってしまおうというイノベーションを生み出した。最後にささがきにした生のアスパラガスをトッピング。このレシピのままつくれば、誰でも自宅でプロ並みのラーメンがつくれるはず。






東北食べる通信 2016年5月号 香草(宮城県蔵王町)

ハーブ。日本語では香草と書く。新緑わさわさの季節に、表紙は収穫済みフレッシュハーブによる生け花(実際にお届けされるものをベースに)表紙を開くと、24種類のポットハーブによる庭造りを目指した。3月号で表紙を一新してから、表紙づくりをいろいろと試してみている。枠をとっぱらったら空間が広がったような気がする。

レシピは、今回、いかにおばちゃんの趣味の世界にとどめず、男子がハーブに興味を持てるのか?という視点で考えている。現地レシピの「塩芋煮」は、まさか和食で、しかもフレッシュハーブに火を通していいんだっていうあたりが斬新なメニューだ。塩芋煮に大量に入れているセルバチコがスーパーでは簡単に手に入らないのが難点なのだが、そこは直接「蔵王ハーブ」さんから買ったら良い。そして、撮影済みのセルバチコは、我が家のベランダで先日食べて空いた甚五右ヱ門芋のプランターに変わって栽培されることになった。現地では、惜しげも無くミントを大量に使ったモヒートにも驚いた。ついつい添え物として扱ってしまっていたハーブ類への認識がちょっと変わった。






東北食べる通信 2016年6月号 蓴菜(秋田県三種町)

表紙は宝石箱をひっくり返したような感じ。最もじゅんさいが美しく見える状況を取材のときから約2週間考えた結果、ネバネバゼリー状のものをまとっているじゅんさいそのものの質感が、近くで大きく見えることが最もじゅんさいらしいなあ、と、思い至った。

最近家の近所に池があるからか、淡水の植生が興味深く、そういえばじゅんさいも、スイレンやハスと同じ、淡水に生息している植物であり、かつては日本中の沼や池に自然と生えていたそうな。このじゅんさいを間近で撮影されてきた今回の生産者さんの一人 近藤 大樹 さんが撮影された写真群を、秋田県三種町の一年として、特別付録ポスターとして真ん中のページに掲載しましたので、ぜひ冊子から外して眺めていただきたい。





2年目に戻る
4年目に続く