2019.05.07(写真左:炭谷俊樹さん 写真右:岡本佳美さん)

岡本:
神戸に1990年にラーンネット・グローバルスクールというコミュニティスクールをつくった炭谷俊樹さんがヴィジョナリーである。彼は「第三の教育」という本を書いていて、概要はほぼここに書かれている。炭谷さんは神戸のご出身で東京大学でアインシュタインに憧れて、大学院まで行って、学会でポスター掲示やったりしたけど、これはもうこれ以上上は無いな、というところまできたと思って。一転、戦略コンサルティング会社の代表であるマッキンゼーに就職した。コンサルタントとして大前研一の一番弟子であると自他共に認める。

非一条校をどうして神戸の山の中につくったのか。(一条校とは、学校教育法の第1条に掲げられている教育施設の種類およびその教育施設の通称)

子供が生まれたタイミングでデンマークに赴任することになった。モンテッソーリ教育を中心として、北欧の教育が素晴らしかった。当時三歳の娘さんがどのように受け入れられたか。捉え方、評価がまるで違った。個性の受け入れ方が日本とまるで違った。娘さんがデンマークの環境で人が変わったように成長してゆき、そのプロセスに非常に感動した。デンマークの国民性もあって、ふとした会話で「デンマークの大学で一番良い大学はどこか?」と聞くと「キミはそれは何をやりたいの?」と言われる。一つの尺度で測らないんですね。学校教育の現場でテストが法律で禁止されている。大人の育ちっていうのもだいぶ違うという実感があった。彼自身も影響を受けて、数年で日本に帰ってきたものの、娘さんを入れる教育環境がどこにも無かった、というところから始まる。

日本の学校で「色鉛筆はこれをそろえなさい、フエキ糊じゃないといけない」とか言われると「ならぬものはならぬ」に対して「はぁ?」となる。日本の一般的な教育環境に入れることがナンセンスだとなったときに、娘さんの教育には間に合わないので結果インタースクールに入れることとなった。その次の、息子さんの為に、というか、自分自身がプレイヤーとしてラーンネット・グローバルスクールという学校を創業した。1990年代。デンマークを参考にして、望ましいと思える教育環境をつくろうと思ったら1学年7人程度のマイクロなスケールである必要があった。当然それが国が認める教育指導要領にはまったくのっとらなくて、その必然的な結果として非一条校としてオルナティブスクールとして始めることになった。日本語の環境でインタースクールのような教育環境をつくろうとした。

日本には既に、シュタイナー教育をもってきました、モンテッソーリ教育をもってきましたといっても、実質3〜6歳の間の幼児教育しかない。6歳以降の小学校でそれをやっているところがないんですね。サマーヒルとよばれるサドベリー教育系。完全に自由でカリキュラムもなく子供の自治、みたいなのもある。炭谷さんはそれとは違うと思っていて、理想郷があって山の中とか特殊な環境の中で子供を囲い込んで教えることへのアンチテーゼであると感じる。シュタイナー教育は10歳まで数字を教えない。それはそれで子供を無視していると炭谷さんは思ったんでしょうね。アーティストとかファーマーは育つんですよ。エコな人とか。でも、社会の仕組みをつくる人とかビジネスマンは、そこからは出てこない。大人がそれを否定しているから。炭谷さんはそのあたりのバランスが素晴らしい。モンテッソーリ教育はバランスが良い。子供の関心に対して教える。子供の子供らしさっていうのと、社会の共存のバランスが良い。この20年、オルタナティブな教育環境がシュタイナー教育、サドベリー教育はフリースクールっぽい文脈が多かった。追随してくる人がいなかった。和歌山の『きのくに子どもの村学園』はサマーヒルスクールやサドベリースクールの系列、本が出ている。北九州にもできている。ここは一条校として設計したから、学校の説明会で「教育指導要領とのマッチングはどうなっているんでしょうか?」などという質問が親から出てくるから、それならそもそも入れない方が良いんじゃないかと、私は思ってしまう。

この20年間、オルタナティブな教育環境っていうのはあったけれど。『探究業界』っていうのは無かった。2020年、学習指導要領が大きく変わるんです。でも40人1学級というのは変わらない。それじゃ結局変わらない。探究っていうものがここにきて社会から注目を浴びている。ラーンネット・グローバルスクールの兄弟校であり、東京版とも言える東京コミュニティスクール(略してTCS)は創業14年目。6年で卒業した子が2ターン卒業して、今は3ターン目。TCSの代表の久保さんは、炭谷さんのところに出入りしていた。TCSはオーストラリアのフィッツロイ・コミュニティスクールがモデル。ヴィジョナリーなロールモデルはフィッツロイだけど、プラクティカルなモデルとしては炭谷さんのラーンネットがモデル。なので提携校というかたちをとっている。

ラーンネットもTCSも、自分たちの事業としてスケールアップしたらいいとは思っていなくて、新たにプレイヤーになる人たちが増えたらいいと考えている。炭谷さんは学校も大事だけれど家庭も大事じゃないですか。ラーンネットが学校でやっているような関わりを、親御さんがやれるようになってほしい。誰でも先生になれるわけでもなくって、資質の問題で育てるのも簡単ではない、という中でナビゲーター人材を増やしたいというのがある。そこで神戸でやっている『探究ナビゲーター講座』っていうのがある。年に二回神戸でやっているんですけど、ナビゲーター講座をもっともっと増やしたいと思っている。それから定期的に東京でも開催したい。保護者。親の関わりで子供はいくらでも変わるので、ここまでできるんだ、っていうのを見せたい。もう一つは、担い手を育てること。現場でがんばってる人のスキルアップのためにナビゲーター講座をつかってほしい。既に700人くらい卒業生がいるんだけれど、ナビゲーター講座のOB・OGの中から教育系の起業をした面白い卒業生もいる。骨太なコミュニティになっている。

『探究的な学び』ということに対する流れが社会的に注目を集めてきていて、探究業界っていうのができてきたのがここ5年くらいの話。プレイヤーは何人かいる。アラサーの起業家が多いのと。大御所としては、京都造形大学副学長の本間正人さん。コーチングというものを日本に持ってきた人と紹介される。探究学舎の宝槻さんと、知窓学舎の矢萩さん。彼らがコミュニティをつくろうっていう動きもあった。

探究業界のメディアをつくりたい。メディアをコミュニティにしようとするとリアルな接点が必要なのでイベントを定期的につくってナビゲーター講座に繋いで行きたい。そのコミュニティがメディアに帰ってくるというのがいまのところのイメージ。教育のことを外注しすぎない保護者がうまいことまざるといいなあと。うまいこといくとナビゲーターが生まれたりという願いがあります。


ラーンネット・グローバルスクール
http://l-net.com

東京コミュニティスクール
http://tokyocs.org