これは、2020年に東京都昭島市で開催されるアーバンベジ・昭島2020という架空のフェスティバルイベントの会場案内を想定したA1サイズの地図パンフレットである。バックキャスティングと呼ばれる手法を用い、ある種の未来予測を行っている。(目標となるような状態を想定し、そこを起点に現在を振り返って今何をすべきかを考えることをバックキャスティングと呼ぶ。)あたかも東京都昭島市がこのような場所になっているかのように見えるが、2017年の現時点ではこのようにはなっていない。

本プロジェクトにおける社会的課題はゴミの問題である。クライアントである株式会社ガイアドリーム社の志岐秀明さんの、20年来の産業廃棄物処理コンサルティングの知見から、ゴミ処理の課題を突き詰めていくと、コンポストからの土作りという話になり、その土をつかっての農作物の栽培といったような話に辿り着いたそうだ。ゴミそのものを減らすということからは、なかなか共感しうるヴィジョンを表現することが難しいが、そこから食べものを栽培するということに、ヴィジョン形成の可能性を感じたらしい。

表面 A1サイズ(画像クリックすると拡大)


10年ほど前、環境バブル華やかな頃に屋上緑化やリサイクルのプロジェクトが散見されたが、どれも観念的なものが先行し、どうにもいまひとつリアリティを感じられなかった。いま再びゴミの問題について、志岐さんのヴィジョンを聞いていると、ひとつひとつのポイントがきちんと調べられていて非常に具体的であり、一つの世界観として描いてみたくなった。

家庭から排出される可燃ゴミの70%は生ゴミで、それを各家庭のコンポストに15日間保管し、乾燥したコンポストの生ゴミを堆肥場で3ヶ月、その後工場で堆肥化され、その堆肥と土の入ったベジポット(野菜の苗の入った栽培キット)を、再びこの町の公共空間や家庭・企業などが栽培する。いわば、自分で出したゴミを自分で食べるサイクルとなっている。

裏面 A1サイズ(画像クリックすると拡大)


このプロジェクトを始めるにあたっては、今年6月にまず海外の先進事例である英国・トッドモーデンへの調査旅行に始まり、もちろんフィールドである東京都昭島市の調査、それから静岡県熱海市にある緑産株式会社の果樹のポット栽培や、果樹が最適に育つための堆肥作りの技術力にはとても感銘を受けた。それから志岐さんが英国を見に行こうと思ったきっかけという映画「Incredible Edible Todmorden」の先見性と、もうひとつの映画「人生フルーツ」で取り上げられていた建築家 津端修一氏の高蔵寺ニュータウンのマスタープランの話には驚かされた。そして、植物に関するディテールについては僕自身が今年春から実験的に始めたベランダ菜園から得ている知識と、なにより練馬区大泉の白石農園から得ている知識は大きいと思う。

そして、このまだ見ぬ世界を描けるイラストレーターは大分に住む yoneちゃん しか居ないなあと思ったのと、飛行機に乗って会いに行こう!という、クライアントの志岐さんの情熱と。

それらの諸々が重なり合って、点と点が線となって繋がって、この未来図が3ヶ月を経て9月に出来上がったところ。東京都昭島市では、現在市内の焼却炉を廃止し、ゴミの排出量を50%まで減らす政策を始めるところであり、この地図パンフレットは市行政への提案資料ともなっている。2017年に入ってから、あ、なんとなく未来はこっちだな、と思い始めたことを時間の許す限り盛り込んであり、もし、昭島市において実現しなかったとしても、きっと、いつかどこかで誰かが実現するだろう。都市の人間は土と緑に飢えている、生な世界との接続、全体観の回復を求めているのだから。

発行元:株式会社ガイアドリーム
写真・デザイン:玉利 康延
イラストレーション:Yone.
文章:田村 真菜
英国視察コーディネート:有限会社リボーン
印刷:株式会社イニュニック


食べられる風景がある街、トッドモーデン
http://tamalog.me/todmorden/