馬と暮らすまち遠野・A1パネル&ポスター



馬搬(ばはん)書いて字の如く、馬が運搬してはこぶ。山に植えすぎた杉の間伐材を馬で曳いて山から切り出し、それを材料にして古民家を改装して外からこの地域、岩手県遠野市綾織にやってきたゲストが滞在するスペースを作ろうとしているのが2016年年初の今だ。建物はやっと屋根を直し始めたところで、今年の夏のオープンを目指している。

そもそも、僕がここに初めてやってきたのは、確か2013年の春、まだ東北食べる通信というものは影も形もなく、ただ高橋博之さんが岩手を案内するから来てくれ、と言われて彼の車で広大な岩手県を巡っている頃だった。そこで出会ったのが米農家の伊勢崎克彦さんだった。伊勢崎さんは16代目の農家で、代々この土地で農家をされてきたという。その年の秋、東北食べる通信の創刊第四号で伊勢崎さんのお米「ササシグレ」を特集してから、しばらくご無沙汰だったのだけれど、去年、「遠野にゲストハウスをつくるから手伝ってほしい」という要請をお受けし、何度か通っている。

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伊勢崎さんは、最初、一人、いや、9年前に横浜からこの土地にお嫁にやってきた奥さんのまゆみさんとの二人三脚で、お米をつくっていた。その後、僕の知らない二年間の間に、菊地辰徳さんが移住してきた。菊池さんは環境コンサルタントであり大の馬好きで、馬に乗って暮らせる土地を探していた。僕は8年前にたまたま阿蘇で出会っていた馬好きの菊地さんが遠野に移住すると聞いて、ああ、世の中うまく出来ているものだと思った。今回の馬搬の馬のハンドリングも彼によるものだ。そうやって仲間が一人また一人と、ドラクエの勇者と仲間達のように集まって来ている。

目指しているのは、馬と一緒に暮らしていけるまちづくりだという。遠野・綾織にある馬のお祭りを実施しようとした際、馬が暴れたら危険だから馬はつかわないことにしよう、という大変バカげた話になった。そもそも遠野の家の建築様式は南部曲り家といい、馬小屋がセットになっていて、昔々から馬と人の暮らしは一体のものだったのだが、現代、馬はどんどん遠野の生活から遠ざかっている。だから、きっと重機をつかってしまえば簡単なのに、この人達はわざわざ馬をつかって間伐材を切り出していることに意味があるんだと思う。

以下、このパネルをつくるに至った、伊勢崎さんが語る遠野のヴィジョン書き起こし



窒素をエネルギーとして、植物だったり生物が食べるんですよ。窒素を栄養素として植物とか微生物が分解して水が浄化されていっていたのが、水路が三面コンクリートになってしまったので、生き物が住めなくなってしまって、本来あった水の浄化機能がなくなっているのではないか。徳島大学の先生が、このインフラをすべて直すとなると膨大なお金がかかるんだけれど、排水する水の遊水池をつくる、例えば本流に注ぎ込む前の田んぼの何ヘクタールかを、浄化するための植物を繁茂させて水を綺麗にするとかしたらいいんじゃないかな、って先生も言っていましたね。それが一番原始的な所。遊水池っていうのは水を綺麗にするフィルターみたいな場所。

菊地くんも僕も、馬が居る生活をここでやってくってなると、いまの全体の土地利用的に、馬が飼えるようじゃなくなっている。昔はこの辺は草が生えてたり、馬を放牧したりそういう場所だったんだけれど、全部杉に植林されてるんですよね。段々畑になってたところも全部杉になってしまった。山の上の方のカラマツが植林されてるところは、昔はツツジだったんだって。

ある程度の中の地域の経済をつくっていくっていうのが前提にあって、目の前に山谷川って川が流れてるんだけれど、ここの小さな流域。川の恩恵を受けている中の、暮らしを考えていくっていう一つの役割。都会の人が素敵だね、山の幸があって、美味しい物があって。でも田舎の人は、なんでわざわざこんな不便なところに来たの?ってなる。ギャップ。このゲストハウスは、この地域をどうしていこうと地元の人が考える場所。ゲストハウスっていう名前もまだぜんぜん考えれてないんだけれど、一般的にはドミトリーって安く共同で不特定多数の人が泊まれるっていうイメージがあるけれど、そうじゃなくて、例えば家族でもいいし、友人同士でもいいし、会社の同僚でもいいから、大切な時間を一緒に過ごしたい人がここに来て。このゲストハウスは電気もガスも無いっていうコンセプトなんで、それでここの中でそういう暮らしを体感して、帰っていくと。

日々の暮らしがこの空気をつくっているから、ここに来る人達も、一日泊まって、日々いろんな人がここに暮らしていくわけですよ。ここに来たいろんな人がここの風景をつくっていく。かまどでご飯を炊いたら、つかった分の薪は割ってから帰ってね、と。そこらにある大根抜いて食べてったら、食べた以上の大根の田種を蒔くのか、あるいは雑草を抜いて帰ってってね、と。次の人のためにね。自分が単純にお金を払って消費しに来るんじゃなくって、もちろんお金払ってもらうんですよ。払ってもらった上で、次のことも考える消費の仕方をする。

グランキャンプ。テレビでやってたんだけれど、豪華なキャンプ?すっごいくだらねえと思って。一方的に消費に行くだけだから。それと違って、消費した分をちゃんと次の人のために繋いでくっていうのがここでの役割だと思っていて。単純に消費したい人がジャンジャン来て、僕の懐が豊かになってもしょうがないわけですよ。

ちょっといまね、僕考えてるのは、例えば、市の水道って、アクアって別会社になってるんですか?あれ。でもまあ基本的に遠野市ですよね。遠野市って水道料金高いじゃないですか。でも水道事業って昭和40年代にけっこう盛んに行われて、でも昔は自分達で取水したり。それだとお金払わなくていいじゃないですか。そういうのもありつつ、いまスマートシティって行政がインフラにお金をかけなくても住めるようなことを国土交通省とかやってるんですが。ここはここでありつつ。水道とかも40年から50年でインフラの更新の時期を迎えるんだけれど、インフラを更新しないで新たにここから川で取水して、下の川にも分配していけるような。そんなこともやっていこうと思ってるんですよ。僕の中では公共事業だと思ってやってて。遠野市に行って何度も何度も話してるんだけれど進まない。

民間の人達ってもっともっと早くやりたいんですよ。予算が付くからやる。とかじゃなくって、いますぐ必要だからやらなきゃいけないんだけれど。移住した人もけっこういるんですけど、いまの住宅の事情見てるとけっこう空家あるんだけれど、入るまでの案内がけっこううまくいってなくて、人が増えれば地方交付税増えるんだけどね、だから勝手に公共事業をやってる感じなんです。

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